欧州と日本の競馬の始まり
現在、世界で行われている競馬の原型は、18世紀に英国で始まり、欧州大陸に広がっていきました。日本では、19世紀の万延元年に英国に倣って横浜で開始されて以来、英国式の競走体系を徐々に整備していき、現在では国際的にPart I(最上位)と認定される「競走システム」を確立することに成功しました。
一方、「賭けシステム」に関しては、英国式のブックメーカー制度ではなく、集中管理式のパリミューチュエル(トータリゼータ)方式を採用しています。
現在、世界最大の勝馬投票売上金額を誇る日本競馬ですが、当然ながら売上から払戻金額を引いた控除金額も世界最大です。では、第2位はというとこれがフランスです。売上そのものでは、オーストラリア、香港、英国の後塵を拝しているフランスですが、「賭けシステム」の違いにより、控除額は日本の約4割を記録し、他の3国を上回っています。
さらに控除額の内訳も日本とフランスは構成がよく似ており、「賭けシステム」に関しては、JRAのお手本はフランスのシステムではないかと思われrます。
国-年次 | 売上金額(百万ユーロ) | 国庫 | 割合 | 運営費 | 割合 | 競走費 | 割合 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
日本-2010年 | 25,435 | 2,349 | 9.2% | 2,508 | 9.9% | 1,433 | 5.6% |
日本-2017年 | 24,492 | 2,312 | 9.4% | 2,521 | 10.3% | 1,255 | 5.1% |
フランス-2010年 | 9,502 | 1,011 | 10.6% | 544 | 5.7% | 825 | 8.7% |
フランス-2017年 | 9,126 | 858 | 9.4% | 768 | 8.4% | 792 | 8.7% |
各数値データは「国際競馬統轄機関連盟(IFHA)」より引用
International Federation of Horseracing Authorities
JRAの実力の源泉とは?
両国とも、控除率は25%前後であり、国庫への納入が約9~10%となっています。
また、2010年から2017年への推移でも、両国はそれぞれ4%ほど売上金額が減少していますが、日本では国庫納付金の割合が微増しているのに対して、フランスでは減少しています。
運営費の割合は両国とも増加していますが、日本が微増であるのに対して、フランスでは約5割増となっています。競走費に関しては、日本が約1割減であるのに対して、フランスは変わらずとなっています。
競馬の「賭けシステム」の特徴は勝馬投票売上金の分配方法に端的に現れます。国庫納付金と競走の賞金が主である競走費は全額が外部流出するのに対して、運営費は内部に滞留するため、その割合は統轄機関の経済的自由度を表しているといえます。
日本のJRAは、フランスの競馬統括機関フランスギャロに比べて、運営費の割合でも上回っており、売上金額が2.5倍以上であるので、結果として3倍以上の経済力を持っていることになります。