韓国の国際招待レース
世界的には極めてマイナーな位置付けの韓国競馬ですが、2016年にICSC(国際セリ名簿基準委員会)のパートII国として承認され、同年に初めて国際招待レース(コリアカップ、コリアスプリント)を開催するなど、近年は国際化の道をたどり始めています。
さらに、2019年には国際招待レースが国際G3に格付けされることとなり、9月に行われる2つの国際招待レースには注目が集まっています。
そのなかで発表された韓国馬事会(KRA)の「日本馬を招待せず」の発表は大きな反響を巻き起こしました。この件について詳しく見ていく前に、韓国の競馬の特徴について触れてみたいと思います。
韓国の競馬事情
実は韓国競馬の勝馬投票券の売り上げは、アジアにおいて日本、香港に次ぐ第3位の規模を誇っています。欧州と比較するとちょうどアイルランドと同程度の売上げで約52憶ユーロ(2017年)になります。
控除率は約27%で日本より若干高く、インドを除くとアジアで最も控除率が高い国と言えます。
韓国競馬の最大の特徴は、レースの賞金が高い、ということです。以下の表は各国の競走数、賞金額および平均賞金額を平均賞金額の高い順に並べたものです。
レース数が少なく、多くの高額賞金レースを持つ香港がダントツですが、なんと日本より6割高い韓国が第2位に入っています。日本の場合は、地方競馬も含まれるため、JRAに限定すれば何倍かの数字になるとはいえ、少なくとも「韓国のレースの賞金は日本の地方競馬よりはるかに高い」ことは確実と言えます。
順位 | 国名 | 競走数 | 賞金額(百万ユーロ) | 平均賞金額(ユーロ) |
---|---|---|---|---|
1 | 香港 | 807 | 126 | 157,314 |
2 | 韓国 | 1,899 | 156 | 82,246 |
3 | 日本 | 16,407 | 841 | 51,295 |
4 | シンガポール | 859 | 36 | 42,313 |
5 | アイルランド | 1,172 | 31 | 26,952 |
6 | フランス | 4,954 | 120 | 24,382 |
7 | オーストラリア | 19,154 | 392 | 20,482 |
8 | 米国 | 37,628 | 742 | 19,737 |
9 | 英国 | 6,400 | 107 | 16,824 |
10 | イタリア | 2,595 | 28 | 11,154 |
これまでの韓国国際招待競走
2016年から2018年までにコリアカップ、コリアスプリントはそれぞれ3回ずつ開催されています。
2016年コリアスプリント 勝馬 スーパージョッキー(香港)
2017年コリアスプリント 勝馬 グレースフルリープ
2018年コリアスプリント 勝馬 モーニン
この結果から明らかなように、香港馬1勝、日本馬5勝と圧倒的に日本馬が優勢であり、2019年にもし日本馬が参戦すれば、優勝賞金の5億7千万ウオン(約5130万円)の行方は想像に難くありません。
KRAの決断とその波紋
従ってKRAの「韓国国民の感情を考慮すると、今年は日本調教馬を招待しないこと以外に選択の余地はありません。」という声明も無理からぬものといえるでしょう。
既にコリアスプリントにエントリーしていたコパノキッキングと藤田菜七子騎手は絶好のチャンスを奪われたことになりますが、気を取り直してブリーダーズカップで頑張って欲しいものです。
今回のことは、韓国競馬がこのままでは永遠にパートI国にはなれない、という事実を自ら世界に知らしめた事件として、永く記憶にとどめられることでしょう。